学道の人は後日を待って行道せんと思うことなかれ。 ただ今日今時を過ごさずして、日々時々を勤むべきなり。 『正法眼蔵随聞記』

平凡な毎日の中で私たちは今日すべきことも明日に後回しにしてしまいがちになります。この道元禅師の言葉はそんな私たちに対する戒めの言葉です。本当に大切なことは、この今日の自分を生き、なすべきことをなすということです。

生きているというのは実は今この時に他ならず、昨日の自分はどうやっても戻れません。かけがえのない今日を生きずしていつ生きるのでしょうか。

「もし10年前に戻れたならば、やり直せるのに……」そんな思いを抱くこともあるかもしれません。しかし今から10年後の私も「10年前に戻れたなら……」と言っている自分がいるのではないでしょうか。ですから今がその10年前なのです。未来を築く大切な今と言えるのです。

(駒沢女子大学 日本文化学科 主任・

大学院人文科学研究科 科長 安藤嘉則)